初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
 
そんな矢先。


「ニナ、新作だって」

「え、お得意さんの?」

「そう。クラスに桃マニアがいるって言ったら、こんなの作ってきてくれた。ニナ専用らしい」


百井くんがまた、桃グッズを持ってきてくれた。

百井くんが投げて渡そうとしてくれているそれを受け取るため、両手を杯のようにして体制を整えながら、学校の外でもわたしのことを話してくれているんだなとか、わたしに渡すために今日一日ずっと持っていてくれたんだなと、ここに至るまでの経緯を想像して胸の奥からじんわりとうれしさが込み上げてくる。

いつもの放課後の、いつもの旧校舎の美術室。

相変わらず外では雨が降り続いていて、電気の通っていない室内はじめじめとした薄暗さが際立っていた。

だけど、わたしの心はほくほくだ。


「きゃー! 今度は桃のキーホルダーだー! なにこれなにこれ、ちゅーするよ!? めっちゃ可愛いー!!」

「口の部分にマグネットが入ってるって」

「へぇ! だからかぁ! この間のペンダントトップを見ても思ったんだけど、ほんっと上手だよねぇ!」
 
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