初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
そういうレトロでノスタルジックなものが身近にあるわたしたちは、もしかしたら都会の学生より恵まれている部分があるかもしれない。
歩くたびにギーギー言う廊下や、機嫌を取りつつじゃないと本来の仕事をしてくれないドアや引き戸、旧校舎全体のなんとも言えない埃っぽさにさえ目をつぶれば、わたしたちはたぶん、すごく恵まれているのだろう。
でも――。
「いいいい今、そこから何かの影が‼」
「木の葉っぱだ」
「じぇーっ!! なんかあっちの奥のほうから人の呻き声みたいなのが聞こえてくる……っ‼」
「ただのすきま風だドアホ」
「百井くん、幽霊出たら倒してよ!?」
「ニナうるさい。黙れ」
怖いものは怖い。
結局、なにかにつけてギャーギャー騒いでいる間に旧校舎はいつの間にか遠ざかっていて、百井くんは心底辟易した様子でため息をつく。
わたしたちが普段授業で使っている新校舎――といっても、築20年ほどの校舎の正門付近で下ろしてもらったわたしは、首元を手で押さえている百井くんに謝罪の意を込め深く頭を下げた。
「ニナに殺されるかと思った」
「ごめんなさい……」
どうやらわたしは、やってしまったらしい。