初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
 
泣き叫ぶような悲痛な声が、わたしの鼓膜を貫いた。

それは、ほとんど普段の声の調子を失ってはいたものの、間違いなく実結先輩のもので、ほかにも『ナツくん』『先生』『告白』というワードが、中にいるのは実結先輩で間違いないという裏付けを主張している。


『庇った』というのは、おそらく、百井くんがほかの美術部員の絵を壊したことを先輩が庇った、という信じがたい出来事を指したものだろう。

でも、明らかに辻褄が合わない。

先輩の言い方だと、まるで逆――絵を壊したのが先輩で、百井くんはそれを庇ったということになる。


いったい、どういうこと……?


実結先輩はただ混乱していて、言葉があやふやになってしまっている可能性も考えられなくはない。

けれど、百井くんに恐怖している様子が言葉の端々から容易に感じ取れたし、そもそも、混乱といっても、先輩はなにに混乱しているというのだろう。

混乱しているのは、むしろわたしのほうだ。
 
< 222 / 260 >

この作品をシェア

pagetop