初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
いつもの放課後、いつもの美術室。
ただいつもと違うのは、すすけてチョコレート色になっているカーテンを洗濯したら百井くんとここの掃除をすることもなくなってしまうんだな、ということ。
それはつまり、必然的に美術室でのおしゃべりも終わってしまうということを意味していて。
「ちょっと寂しいなぁ、さすがに……」
チョコレート色のカーテンの裾を意味もなくひらひらと振りながら、思わず大きなため息が出ていった。
この3週間、放課後は毎日百井くんと一緒にいたから、明日からはなにも接点がなくなることが、今になってもなかなかしっくりこない。
入部している写真部以上に部活をしているようで楽しかったし、百井くんは、この美術室でならわりと素直に自分の話をしてくれる。
いまだにスケッチブックの持ち主は自分ではないと主張してはいるけれど、わたしはもう、そのことで彼をからかったり茶化したりすることはなくなり、百井くんのほうもまた、なにかにつけてあのときのパンツの話を持ち出さなくなった。
……そこはお互い様だ。
「悪い、ニナ。遅くなった」
「あ、おかえりー」
と、そこへ百井くんが戻ってきた。