私の思い～きっかけとタイミング～

そんな私の様子を手で制する井上さん。

「分かっているよ。最後まで言わなくても良い。」

井上さんは綾子さんのように、ふんわりと笑った。

「最後に言わせてくれ。俺は本当に新田さんが好きだ。まだちゃんとした言葉で伝えていなかったからね。」

私の目に涙があふれる。

何でこんなに良い人に、こんな表情をさせないといけないんだろう。

私の胸はキリキリと痛む。

「新田さん、もしこの先生と何かがあったらすぐに連絡をくれ。俺は君をさらいに来る。」

私は手で自分の顔を覆う。

次から次へと涙が頬を伝う。

すると恵太が私の肩を掴んだ。

「心配には及びません。美紗を手離す事は有り得ませんから。」

そんな恵太の様子に、井上さんは寂しそうに笑った。

「…じゃあ、俺は一人で食事をしていくから、二人で帰ってくれるかな。」