私の思い～きっかけとタイミング～

苦手意識が少し和らいだような気がする。

「じゃあ、これ美味しそうだからちょうだい。」

井上さんはいたずらっ子のような表情をして、私の卵焼きをひょいとつまんで口に入れた。

「まだ返事してないのに、口に入っちゃいましたね。」

そんな事を言いながら、私は笑ってしまった。

「あれ？新田さんの卵焼きは塩味？」

井上さんは少し驚いた顔をする。

「そうなのよ。普通は卵焼きって言ったら甘いよね。美紗ちゃんの卵焼きは甘くないのよ。」

綾子さんは井上さんに言う。

うちは何故かお母さんがお父さんの味覚に合わせて、塩に少しの砂糖で卵焼きの味を調える。

もちろん自然に私もそれに馴染んだ。

小さい時、ちょうど今の井上さんのように他の人のお弁当の卵焼きを食べてびっくりしたのだ。