斬華
「宗助!!」

「いやあぁぁぁ!!」

 由之介の叫びと、華の悲鳴が重なった。
 ぐら、と身体が傾いだ宗助に、とどめの刃が振り下ろされる。

「宗さん!!」

 華が、宗助に駆け寄った。
 宗助を庇うように、刃の前で彼に抱き付く。

「華ちゃんっ!!」

 仰天し、思わず足を止めた由之介だったが、宗助と華の前の男は、いきなり横倒しに倒れた。
 宗助が、滑り込むように男の足を払ったのだ。
 床が血で濡れていたのが幸いした。

 宗助は一緒に倒れた華を突き飛ばすように、部屋の奥で震えている女将のほうへと追いやった。

「引っ込んでろぃ!」

 血で染まった顔を乱暴に拭い、宗助は立ち上がると刀を構えた。
 額を割られたものの、致命傷には至らなかったようだ。

 だが頭は少しの傷でもかなりの血が出る。
 とめどなく流れる血は、視界を遮る。
 長くは戦えない。

「宗助! こっちや!」

 由之介の声に、宗助に対峙していた幾人かが反応した。
 一か八かの賭けだ。
 一度に敵を動かして、隙を作る。

 三人とも致命傷ではないとはいえ、深手を負っているのだ。
 早く止血をしないとヤバい。

 敵はざっと見たところ、残り五、六人。
 うち三人が、一斉に宗助に飛び掛かった。
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