【BL】ガーベラの隙間に。∥たんぺん∥
〖薫side〗
「…ネクタイは、どうやって結ぶんだ?」
「ふっ…
俺がやってやるよ。」
「いっ…今笑っただろ!」
「ネクタイの結び方を知らない坊ちゃんね…。」
「うるさいっ!」
しょうがないだろう?!
今まで、パジャマしか着たことがないんだから。
「ちょっと大きいな。」
「ちょっとじゃねぇだろ。」
また笑った。
僕がちびだから馬鹿にしてるのか。
「寝る子は育つって言うけどさ、薫は例外だな。」
「失礼な!
…だいたいな、ベッドに寝転がっていれば寝れる訳じゃないんだぞ!」
もし今寝て、もう一生目覚めなかったらどうしよう。
そう考えると、怖くて夜も眠れない。
「…独りで眠るのは、怖い。」
「オイオイホントに子供みたいだな。」
「じゃあオマエは怖くないのか?!」
「……。」
冬夜は急に黙ってしまった。
僕は、なにかいけないことを言ってしまったみたいだ。
「悪い、変なことを聞いてしまって。」
「…いや、どうってことない。」
きっと過去のなにかを思い出してしまったんだろう。
トウヤにも、思い出したくないものの1つくらいある。
「…さ、行くか。」
「ま、待って。
叔父さんに、この事…」
「ナイショ。
だって俺怒られたくないし。」
「でも…!」
「大丈夫。
ちょっと出るくらい、どうってことないだろ?」
大丈夫だよね。
多分、大丈夫…
…平気だよね?
「外、出たいんだろ?」
「…うん!」
「おっし、んじゃここから…」
「お、おい…窓から出るなんて、」
「この庭、裏に抜け穴があるんだ。
行こう、カオル」
名前を呼ばれた瞬間、何でもできるような気がして。
僕は冬夜と一緒に、初めて外へ出た。