ランチタイムの王子様!
「とにかく、私達はあの時終わったんですよ。焼け木杭には火が付き易いなんてことわざがありますがこの場合は当てはまりません」
王子さんは力強く断言すると、ソファから立ち上がり寝室から分厚い紙束を取ってきた。
「あなたに差し上げます。私はすべて覚えてしまったので」
「本当にあったんだ……」
紙束だと思っていた物には背表紙がちゃんとくっついていた。何度も開いて閉じてを繰り返しているうちに、元の形に収まらなくなってしまったようだ。
私は王子さんお手製のレシピノートを受け取ると、膝の上に置き一枚一枚丁寧にページをめくった。
いつから使い込んでいたのだろうか。
ところどころすり切れていて、ページの端が黒く変色しているところもある。
「ボロボロですね……」
「私が中学生の時から少しずつ書き溜めていたものですからね。キッチンすみれで採用されたものもあるんですよ?」
「そんな大事なものをもらっちゃっていいんですか?」
このノートは王子さんにとって、積み上げられた札束より価値がある。
朝霧さんにあげるなどもっての外だが、私が気軽にもらって良いものでもない。