ランチタイムの王子様!

王子さんと試作品を作る段に入ると、同じルーティンだった日常が変化していった。

「お待たせしました。行きましょう」

駅前のスーパーで待ち合わせをして一緒に食材を買い込むと、これまで土曜のお昼にしか訪れることのなかった王子さんのマンションに平日の夜にもお邪魔することになった。

数時間前まで同じフロアで仕事をしていたというのに、今はマンションでふたりきり。やましいことをしているわけでもないのに、背中がぞわぞわとむず痒い。

「どうしました?」

「いや、何でもないです」

私はエプロン姿の王子さんからさっと目を逸らすと、買ってきた食材を冷蔵庫に入れる作業を再開した。大根片手に、ぽっと赤らんだ頬をおさえる。

(王子さんのエプロン姿、好きだなあ……)

スーツも良いけど、王子さんと言えばやっぱりエプロンだよね……。

「ぼさっとしていないで、キャベツを切ってくれませんか?」

「はいっ。すみません」

能天気な私に王子さんから容赦のない檄が飛ぶ。

ホントに、仕事と料理に関しては手を抜かない人である。

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