婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
「お久しぶりです。おば様。なつです」
中からの反応は何もなかった。
ゆっくりとベッドに近づくと、たくさんの管に繋がれた圭司の母親が静かに横たわっていた。
「おば様…」
なつの目からポロリと涙が流れた。
そう。
彼女は既に植物状態になっていたのだ。
なつは彼女の手をそっと握った。
「おば様。早く目を覚まして下さいね。私は圭司さんとはお別れしてしまいましたけど、おば様の回復を心から祈っていますから」
と、なつがそんな言葉をかけた時だった。
「やっぱり、圭司の元カノだったんですね」
なつの背後から女性の声がした。
「え?」
振り向くと、点滴用の注射器を手にした由香理がいた
「ごめんなさい…勝手に入ってしまって」
なつはは気まずそうに立ち上がる。
「いえ。あの………ちょっと話しませんか?」
なつはゆかりの言葉に頷いた。
二人は病院の中庭に出て、小さなベンチに腰掛けた。
「なんとなくそうかなって思っていました。女の勘っていうか」
由香理がふっと笑う。
「ごめんなさい」
「いいえ。私こそ、なつさんにあんなこと言ってしまって…。とにかく必死だったんです。なつさんに圭司を取られてしまうような気がして。気を悪くされましたよね。本当にごめんなさい」
由香理はなつに頭を下げた。