太陽に恋をして
いくら怒鳴っても揺らしても起きないゆづを部屋に残して、隣のママの部屋を覗く。


夕べも遅かったのだろう。
ママはだらしなく口を開けてベッドで寝ていた。
脱ぎっぱなしのスーツをハンガーにかけて部屋をそっと出る。


キッチンで淹れたコーヒーを、マグカップになみなみと注ぐ。
それと、グラニュー糖とシナモンをかけたトーストで、簡単な朝食をとって時計を見上げると、そろそろ8時になるところだ。


「ねぇ、ゆづ。今日、仕事でしょ?もう8時だけど」


部屋に戻り、まだベッドの下で毛布にくるまって寝ている唯月の耳をひっぱると、ようやく目が覚めたのか、唯月はおっきなあくびをしながら、んん、と伸びをした。

「…眠い」

目尻にたまった涙をごしごし拭きながら、唯月はゆっくりと起き上がる。


唯月は朝に弱い。
低血圧なんだと思う。

朝は体に力が入らないなんて言って、よろよろと私にもたれかかったりする。



「コーヒー飲む?」

ほっておくともう一度寝そうだ。


「ん、飲む」


唯月はよいしょ、と気合いを入れて立ち上がった。

「そのかわり、髪してね」

私が部屋を出ながらそう言うと、後ろからはぁい、と眠そうな声が聞こえた。




< 2 / 110 >

この作品をシェア

pagetop