太陽に恋をして

〜side 唯月〜

マンションの駐車場に車をとめて車から下りると、楓佳は公園に寄って帰ろうよ、と言って笑った。

「雪が積もるの13年ぶりなんだって」


バッグを振り回しながら、楓佳は雪の積もった道を歩く。


マンションの横の小さな公園は雪で真っ白になっていた。

楓佳は低い滑り台に積もった雪を嬉しそうに手で集め、丸めている。


俺はコートのポケットに両手を入れて温めながら、その後ろ姿をじっと見ていた。


今日もあいつといたなんて。


雪のせいで、キャンセルが相次ぎ、店を早く閉めることになった時、楓佳が無事に帰れるかが一番心配だった。
何度も電話をしてるのに、携帯を見る習慣がない楓佳は気付かず、やっと繋がった時は本当に安心したのに。



「ゆづ見て?」


楓佳が手のひらに小さな雪だるまを乗せて振り返った。


「明日には溶けてるだろうね」


そう言ってベンチにそっと置くと、楓佳は雪だるまの頭を撫でる。


冷たさで真っ赤になった楓佳の細い指を、俺はポケットに入れていた両手でそっと包み込んだ。


「つめた…」


俺の両手の中で、楓佳の指先が少しずつ温かくなっていく。

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