太陽に恋をして
◎履き慣れないハイヒール
私は背が高いから、今まであまりハイヒールを履いたことがなかった。

だけど、今日はハイヒールを履いていこうと思う。


だって、私が10センチのヒールをはいても、まだ柳原さんの方が背が高いから。


唯月だって175センチ以上はあるから、履けないことはないけど、唯月と出掛けるならスニーカーとかぺたんこ靴の方が楽でいい。



リボンのついたベージュのハイヒールは歩くたびにかつかつと小気味いい音がして、なんだか自分がすごく素敵な大人の女になった気がした。


柳原さんと待ち合わせの場所まで歩きながら、先日の雪の降った日のことを思い出していた。


「そんなこといちいち報告しなくていいよ」


そう唯月は言った。

その言葉が、私はショックだった。


今までなら、友だちとどこでお茶したとか、何を食べたとか、そんな下らない話にも、いつだってうんうんと頷いてくれたのに。

フォンダンショコラにだって、興味津々で今度一緒に行こうって言ってくれたはずなのに。

熱帯魚のバーにいたかわいい魚の話も、私が飲んだ水色のカクテルの話もきっと喜んで聞いてくれたのに。


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