僕の好きな女の子
4歳の希華ちゃんが浮かぶ。
目がクリクリして笑顔でボクに言ったんだ。
「クーちゃん!」って。
「クマのぬいぐるみだから、クーちゃんね!」って。
あの日から、ボクはキミのそばでずっと、キミを見てきた。
楽しい時も嬉しい時も、苦しい時も悲しい時も。
いつだってキミを見てきた。
笑顔のキミも、怒ったキミも、泣いてるキミも、どんなキミもボクは好きだった。
こんなお別れは凄く寂しいけど、仕方がない事なんだって思うんだ。
きっとこれがボクの運命なんだ。

「やだぁぁ!クーちゃん!!!」
パパさんとママさんの手を振りほどき家に近付いた。
「希華ちゃん!来ちゃだめだよ。」
ぴたっと希華ちゃんが止まった。
「クーちゃん…?!クーちゃんなの?」
「聞こえるの?」
「うん…クーちゃん、ごめんね!助けれなくて、ごめんね!」
希華ちゃんがその場で泣き崩れた。
「気にしないで…ボクは幸せだったから。」
パパさんやママさんも聞こえてるみたいだった。
二人とも耳に手を当てボクの声に耳を傾けていた。
「ボクを愛してくれてありがとう。ボクを家族にしてくれてありがとう。本当に幸せな日々を過ごせたよ。」
希華ちゃんはもう何も言えない程泣きじゃくっていた。

体の殆どが燃えて来た。このまま燃えて無くなるとこを見られたくなかった。
神様、もう一個お願いを聞いて!
ボクの体を出窓のこの場所から落として。
「希華ちゃん…さようなら。」
コロンと出窓からボクは落ちた。
これでいいんだ。
ボクが灰になるところなんて見せたくないんだ。
ありがとう…神様。

ほどなくして火は消された。
ボクの体はなくなった。
火をつけた女の子はすぐに捕まった。
けれど精神的におかしな事を叫んでいて話にならないみたいだった。
< 13 / 15 >

この作品をシェア

pagetop