●飴森くんの王子。

 

 

「ご、ごめんなさい、孤高の王子」
「もう座るね」
 


  
女の子たちが口々にそう言い、
自分の席へと戻っていく。
 

あぁああ、あたしの楽園が!

 
 

「ちょっとあんたなにしてくれんだよ!」

「なにって僕は呪いをかけると言っただけだよ」

「なんでサラッと怖いこと言ってんの!? 頭のネジ緩みすぎだろ!」

「呪いは怖いからこそ素晴らしい……ふふ、みんな終わりの日には僕のことを恐れ崇め慄くんだ……ふふふふ」
 


 
なんだこいつ、なんだこいつなんだこいつ!?
もう怖いというより気持ち悪すぎて喋りたくないな!?
絶対に完全に完璧に前璧に頭がすごいことになってるよね?
 


なんでこんな人が隣にいるの?
取り敢えず顔が見えないからフード取って欲しいんだが……?
 

 

というか“ココウの王子”ってなんだ?

 


 
「悪かったな孤影。おいユウ、帰り先帰るなよ」
 


 

リューが前半部分をフードマンに、後半部分をあたしに向けて言った。
無論あたしは完璧スマイルで返す。

 

 
「あたしは天使の願いしか聞き入れない主義です丁重にお断りいたしますすみません」

「丁寧に言ったからって結果は変わらんからな」

「あ、そーですかそーですか」
 


 
これだから幼馴染み&許婚は嫌なのだ。
いろんな意味で距離が近いしいろんな意味で厄介だ。
 


 

「早く席つきなよ白石龍」

 

 
フードの中から素っ気なくリューに言い放ったフードマンは、不意にこちらに頭を向けた。
もちろん顔は見えない。あの、そろそろフードを……
 


 

「飴森勇……君の今日の運勢は最高で最悪だ」

「………………は?」


 


 
いきなりあたしのフルネームを呼んだと思ったら、
いきなりわけ分からんね!? 心外なこと言われたらそりゃ確かに運勢ガタ落ちだわ!

 


もう席替えしたいんですけど!?
まだ5月あと半分あるけど席替えしてくださいよ先生!!
 

 

 
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