ぼくのまわりにいる悪い人とぼくの中にいる悪い人
はじめての犯罪
『ぼく…?お腹に隠した物…出してごらん…』
少し頭のハゲた白髪まじりの初老のおじさんはぼくの左肩を掴んだ。右手にはパン、汚れた半袖シャツのお腹のあたりに隠して店を出ようとしたその時、ぼくはおじさんに左肩を捕まれる…
小学3年の夏休み。
初めての犯罪だった。


こんこんっ!
弥生が来た…
ドアをノックする音で見当がついた。すぐに開けるのは嫌だった。理由が二つある。
いかにも待っていた…というのがなんだかカッコ悪い。
もう一つは…


『こんこん!ぶん太?』
『今開けるよー』 『寝てたの?居ないのかと思ったよ』
『…ネタ…あんの?』弥生は自分の胸に手を突っ込み1㎝位の四角い小さな物を出す。
サランラップに包まれている。
覚醒剤だ…
僕は弥生に一万円を渡した。
『ぶん太…そろそろヤバいよ…』
『弥生…ビビってんなら他から引っ張っからいいよ』


ぼくと弥生は幼馴染みだ。
家庭環境も似ている。ぼくには継母がいる。弥生には継父がいる。弥生と呼んでるが本当は違う。
幸子という名前だ。 弥生は、この名前が大嫌いだと小さい頃から言っていた。


『幸せな子とかありえないよね…』


弥生から受け取ったネタを持って出かけた。
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