意地悪なきみの隣。



体育館の壁に貼られた新クラスが書かれた大きな用紙の前にはたくさんの人。


この中にいるんだな。

というか同じクラスなんだよな。


そう思っただけで嬉しくなる。


恋心なんてもうないにしても、それは俺にとって最高だった。


名前をボーッと見つめて、中学からの友だちの紘樹に話しかけられていることにも反応しなかったくらい。



なのにさ?



「あ、やまとくんと同じ読みの人がいる」



突然そんな声が聞こえて隣を見てみると、いたんだ。



小さい女の子。


郁ちゃんがいた。


………それ同じ読みの人じゃなくて、本人なんだけど。



まあ苗字違うし仕方ねえか。
教室で俺見たらビックリするんだろうな。


なんて、心を踊らせながら教室に行ったけど何も起こらなかった。



「陽菜ちゃんと同じクラスで本当に良かったよ〜」



市倉に抱きつく郁ちゃん。


あれ…。


俺が『やまとくん』だってことわかってない?



…やっぱり、時間が経つと忘れるもんか。


顔も声も。


俺だけ…かな。



「大和……郁ちゃんって子もしかしてあの子?」



紘樹がアゴでくいくいと郁ちゃんをさす。



「そうだけど」



「ここで会う?高校で出会う?再び恋心が目覚める感じ?」



…うざすぎ。

なんで紘樹ってこんなうざいんだろ。


って、それどころじゃねえし。



俺は見た瞬間わかったのに。

郁ちゃんは俺に気づかねえの?


もう…郁ちゃんなんて呼べない。



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