さようなら僕の死神
「いや、たまにいるんですよ。死神っていう証拠を見せろっとか言われて証拠見せたらオレは死にたくないっとか言って私達を殺そうとする輩が。」


彼女が淡々とすげた事実が信じられなくて僕は当分顔文字のままだった。
それでも表情を変えない彼女はとことんルーズだ。クールイケメンキャラの僕の顔が顔文字化しているのだから何かしら言ってほしいものだが。

「貴方は私の正体を疑わず、すんなりと受け入れてくださりましたがやっぱりこうなるんですね。ラブコメとかやっぱり建前だったんですね。私を殺す建前。だますため。」


僕は何も言えない。うつむき続ける。僕は彼女の顔を見ることができるが彼女は僕の顔をちらりとも見ない。


「90日なんて期限の1日目でずいぶん単純でありがちなことを始めましたね。貴方が面白いというのは撤回しましょう。でもこれで貴方の人生つまらない最悪の人生から、我々死神にとっての面白い対象になることでしょう。」

やはり僕は話さない。図星なんてわけはない。そんなこと全く考えてなんてなかった。
ただ、彼女とお茶の一杯だけでもしたかっただけなのに。
話さないのではない言葉が出ないのだ。でも次の彼女の一言が僕を激昂させた。


「なんてありがちでつまらない。また、私は殺されるのか。」

「っ。」


また、「また」といった。


「誰に殺されたっ。今まで誰に殺されたんだっ。誰に傷つけられたっ。」

彼女は急に大声を出した僕に驚いたものの、大してそのような反応を見せずに目をぱちくりさせていた。

「貴方は私を殺そうとしているのではないのですか?」


「当り前だろう、こんな美しい、かわいい女の子に傷などつけようと思うか。」

「そう、ですか。ならおろしてください。誤解してしまいました。ああ、恥ずかしい。」


本当に大した感情表現もない。彼女は無表情というわけではないのだろうが豊かなほうではないようだ。
そして僕は素直に彼女を降ろした。


「ありがとうございます。」

いえ、僕も女の子を担いだりしてごめん。

僕がその言葉を言う前に彼女は言った。
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