さようなら僕の死神
「ねえ、久我さん。」

彼女が僕に話しかけてきたのは、僕の家で机に座り紅茶をすすった後だった。


「なぁに、二月ちゃん。」


「死神で構いませんよ。」


「そう?なら死神ちゃん。二月って名前って何なの?」


「はぁ、上司につけられたものでして。」


「ほう。」


上司だとっ、そりゃあ世の中の死神が彼女一人であるわけはないだろうが、重要なのはそれは男であるか、女であるか。
ちなみに彼女は僕に何かを伝えようと思って話しかけてきたのだろうが本人が気にしている様子はないし、大丈夫だろう。

「死神には死神というだけで名前はないのですが、いやあったのですがないんですね。
まあそれで人間の学校に混ざるのなら名前をつけなきゃだめだ。と上司に言われまして。」


「その上司ってのは?」

「死神です。」


「いや男か女かって話。」


「男です。」

本当に淡々と告げるな。まあ、ラブコメには恋のライバルの一人や二人いなくては。

「それで?他には?」


「はあ、歳は外見年齢19歳。茶髪、ショートカット、痩せ形、メガネ、チャラい、チャラい、チャラい。」

やけにチャラいを強調している。この様子だと死神ちゃんはあまり好いていないようだな。


「いろいろお世話になっています。」


アウトーーーっ。

「ほう。」


僕は震える手で紅茶のカップの取っ手を持つ。カップが僕の手と同じくカタカタと揺れている。


「それはそうと、私言いたかったことがあるんです。」

落ち込みモードに入っている僕へ死神ちゃんは淡々とではなく、ゆっくり、きっと感情をこめて「それ」を僕に伝えてくれた。


「さっきはうれしかったですよ。私は狩る、という対象者と深くかかわったことはありません。殺されたことはありますが、業務目的以外で話したことはないんです。」


「だから、貴方みたいな人と関われてとってもよかった。とっても嬉しくて、面白くて、楽しかった。これが本当にラブコメなら、私は初めて感じるこの感情をラブ。つまり恋と例えてもいいような気がします。」


そう、とてもうれしいことを言ってくれた。だけどその言葉は自分に飽きている僕を奮い立たせた。





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