お菓子な男の子
リンゴの家はやっぱり静かだった。


「お菓子と飲み物持っていくから先に部屋に行っててー」
「うん」


部屋に入って座ると、かわいいクッキーと麦茶を持ったリンゴはすぐに現れた。


「このクッキー、昨日作ったの!」
「ほんと料理上手だよね。うん、おいしい」
「よかった」


しばらく、沈黙が続いた。クッキーだけが減っていく。この空気、耐えるのも辛くなってきそうだけど、切りだしかたも思い浮かばない。


「クッキー、なくなりそうだね」
「あ、あぁほんとだ!おいしいから夢中で食べちゃった」
「作った甲斐があるよ。よかった」


また沈黙。
私から話したほうがいいのかな……?亮くんのことも話さないといけないよね。


「「あのさ」」


かぶってしまった。リンゴと目が合う。


「「ふっ………」」


お互い吹き出した。何やっているんだろう、私たち。


「何だろう、この空気!緊張しすぎだよね、ただアンちゃんと話すだけなのに!」
「そうだよ!まるでお見合いみたい!」


なんかホッとした。これがいつもの私たちだ。


「私から話してもいい?」


「アンちゃんたちが森で別れたあと、亮輔くんと話したの。亮輔くん、泣いてた。みんなとの、アンちゃんとのつながりを壊したってすごく苦しんでた」


リンゴは言葉を選ぶようにゆっくりと話す。


「亮輔くんには思い出してほしいことがあったから話したの。アンちゃんに今まで言わなかったのにはね、理由があるんだ」


麦茶の氷がカランと鳴った。
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