不順な恋の始め方
「せやから、なんとなく森下さん赤の他人って感じせえへんねんな」
まあ俺だけやろうけど、と付け足してまた再び顔中に皺を作る坂口先輩に、私はつい見惚れてしまった
黒色の無造作に整えられた髪に、黒ぶちの眼鏡。それから、スッと通った鼻筋に、切れ長の目。
その容姿はスーツにビシッと合っていて、それはもう本当に王子様みたいなのだ。
「……って、そんなことより森下さんこれから電車で帰るん?」
「え、あ……はい。タクシーは高いし、電車しか交通手段無いので」
それに、送り迎えしてくれるような彼氏は私には居ないし。
そう、心の中で付け足す。
すると
「もしあれやったら一緒にタクシー乗ってくか? 俺も今日は飲んでしもうたからタクシーで帰ろ思てたんやけど…」
坂口先輩の口からは、そんな驚きの言葉が飛び出してきた。
「え……でも」
申し訳ないですし、なんて付け足してみたけれど。実は、満更でもない私。
その証拠に、胸の鼓動は通常よりも遥かに高鳴ってしまっている。
あぁ、私の心はなんて正直なのだろう。