不順な恋の始め方
そんな私の言葉を聞いて坂口先輩は一瞬驚いたような表情をしたあと、すぐに顔中に皺を作るようにして笑った
「ははは、なんでって同じ会社で同じオフィスにおるんやから知ってるに決まっとるやん」
おもろいなあ自分、と笑い続ける坂口先輩は、お気づきの通り根っからの関西人である。
上京して5年は経ったらしいが、未だこの関西弁を保っているのだから凄い
「いや、でも、話したこととか接点とか全然ないし……ほぼ赤の他人みたいな感じじゃないですか」
「え、そう?」
「へ?」
坂口先輩のひと言に、ついポカンと間抜けに空いてしまった口
私がその口を慌てて閉ざすと、坂口先輩からまた驚きのひと言が飛び出した
「確かに話したことは全然ないけど……
あー……えっと、これ自分で言うのアレやねんけど……俺な、給湯室で森下さんが俺の事白馬の王子様みたいや言うとったの聞いたことあんねん、実は」
「へ、なっ!?!」
坂口先輩の言った言葉に、大きく目を見開いて驚いた私だが、その〝白馬の王子様みたい〟という台詞は紛れもなく自分が発した台詞である。
それも、一度や二度ではなく、何度も何度も発した覚えがある。