不順な恋の始め方
坂口先輩は、ずっと、憧れてきた先輩。
坂口先輩の優しさや頼りになる逞しさは、あまり関わることがなくても知っていた。
坂口先輩は覚えていないだろうが、私が会社に入って間もない頃、廊下を埋め尽くす勢いでばら撒いてしまった沢山の資料を嫌な顔ひとつせずに時間をかけて拾ってくれたこと。
唯一の坂口先輩との関わりはそこだけだけれど、私には大きな救いの手だった。
先輩後輩関わらず、いつも周りに誰かがいて、頼られて。皆が憧れる。そんな人。
そんな坂口先輩と結婚することが出来るなんて、まるで夢のような話だ。
でも
「坂口先輩とは結婚できないです。してもきっと上手くいかないし、坂口先輩に負担がかかるだけだと思うんです
なんか、もう…本当に間違っちゃいましたね、私達。坂口先輩は気にしないでください。心配かけて、ごめんなさい」
このまま結婚、となると坂口先輩にかかる負担が大きすぎる。
それに、坂口先輩はいつまでも皆の……そして、私の憧れでいてほしいから。
勢いで誤ってしまったあの日の事で、坂口先輩の人生を変えてしまいたくない。