不順な恋の始め方

「冗談なんかやないで。割と本気で言うてんねんけど」

「な、え……」


違う、違う、と何度も自分に言い聞かせたけれど……この坂口先輩の真っ直ぐな瞳を見てしまっては、そんな風に思えるわけなくて。

本当に結婚しようと思ってくれてるんだという少しの驚きと、それから、嬉しさと、罪悪感。

嬉しいんだか、申し訳ないんだか、これまでに味わったことのないくらい複雑な心境だ。



「でも、結婚ってそんな簡単に出来るものじゃないじゃないですか……普通、ちゃんと恋愛して、付き合ってっていう順序が……」


坂口先輩の気持ちは本当に嬉しかったけれど、ちょっと非現実的すぎると思った。

もし仮に結婚することが出来たとしても、普通ならそれまでにしているはずの〝恋愛〟という過程がないのだ。

仮に、そんな状態で結婚する事が出来たとしても、結婚してから上手くいくはずがない。

結局、離婚してしまうということにもなり兼ねないだろう。

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