不順な恋の始め方
「柚希がまさかこんな事になるなんて」
信じられない、と付け足して俯いた涼ちゃんはそのまま「会社の人?」と問い掛けてくる
見事なまでに次々と当ててくる涼ちゃんに驚きつつも私は「うん」と一度だけ頷いた
「え、まさかそれって」
突然、勢いよく顔を上げた涼ちゃん。
その涼ちゃんの表情は、何故か明るく、何か希望や期待に満ち溢れているかのような、そんな表情。
その涼ちゃんの表情が誰のことをさしているのか、私には分かる。
「………うん。坂口先輩」
私が会社に入った当初からずっと憧れていて、涼ちゃんにも何度か話をしていた営業部の坂口譲(サカグチ ユズル)先輩だ。
私の言葉を聞いて立ち上がった涼ちゃんは私の肩を勢いよく叩いた
「いたたた」
「でかしたわね!柚希!」
「え? で、でかしたって……」
いやいや、一体涼ちゃんは何を言ってるのだろうか。
だって、付き合ってもない人との子供ができたんだよ? それなのに……
「アンタいつまでも結婚するまはもうエッチはしないとか、彼氏なんていらないとか言ってるからどうしようかと心配してたの。でも、あの坂口先輩とって……意外とやるじゃないの」
見直したわ、と私を叱るどころか褒めている涼ちゃんの思考回路はどうなっているのか不思議だ。