不順な恋の始め方
「え?」
「だ、だって…こんなに大きくて綺麗なマンション…」
車の中から、目の前に聳え立つマンションを指差す。
すると、隣にいる坂口先輩が一瞬驚いたような表情をした後、何故か「ぶっ!」と噴き出すようにして笑い始めたのだ。
「え? さ……坂口先輩?」
「ちゃ、ちゃうねん森下さん……っ、ごめん、俺のマンションあっち……」
坂口先輩は、笑いを堪えるように左手でお腹を抱える。そして、もう片方の手で私とは反対側を指差し言った。
「え?」
坂口先輩の指差す方を見てみると、そこにも同じくマンションがあって。
私が指差した方のマンションよりは少しだけ小さめで、でも、綺麗なマンション。
「あ……」
坂口先輩のマンション、あっちじゃなくてこっちの方だったのか……!!
たった今、状況を理解した私はどうすれば良いか分からず、取り敢えず「すいません!」と坂口先輩に謝罪し頭を下げた