不順な恋の始め方
「はは。いや、こっちこそごめんなあ。あんなでっかいマンションやなくて」
冗談だとは思うけれど、坂口先輩のそのひと言に私の心はポッキリと折れてしまい、肩を丸めるようにして「本当すみません」と呟いた。
「はは、いや、冗談やで? いやあ、森下さん。ほんまおもろい。ええと思うで?そういうの」
「あ、はは…どうも…」
何のフォローなのかは分からないが、フォローをしてくれている坂口先輩に私は愛想笑いで返事を返した。
そして、やっと車から降りた私達は運べる分の荷物だけを持ち、マンションへと入って行く。
「わー…綺麗…」
ロックが解除され、ガラス張りの扉が開く。
中は外装に伴い、新しく、綺麗で。この綺麗なマンションに住むのかと思うと、つい声が出た……が
「まあ、あの向かいにあるマンションと比べたら全然やけどなあ」
「な……っ……」
坂口先輩の発した言葉に、私はまた少し肩を丸くして少し俯いた