罪づけ




……本当は、この感情の名前はとっくの昔に知っていた。



体を重ねるようになって、同期という関係だけじゃ知るはずのなかったことをひとつひとつ覚えていって。

笑って飲んで、おしゃべりして。たまに息ができないほど苦しくて。それでも楽しい時間が悲しいことを塗り替えていった。

油絵の具を重ねるように何度も、何度も。



そうして時は流れて、ふとした瞬間にそんなまさか、って。高坂さんのことが頭をよぎってありえない、って。

考えた。たくさん否定した。



だって彼には奥さんがいて、堂々と会うことができない。本当ならこんなことになるはずなかった。

今の私たちは歪んでいる。おかしい。



わかってる。……わかってる。

それでも。
もう誤魔化すことなんてできそうにない。






────好きなの。誰よりも、彼のことが。






ああ、私、どうして。透吾のことを好きになるつもりなんてなかったのに。

それなのに私は彼が好き。こんなにも愛おしい。



結婚できる誰かじゃなくて、結婚できなくても、私は透吾がいい。

透吾じゃないと、嫌なの。



哀しいくらいに、私は今、彼を想っている。



罪に濡れた関係。愛なんて信じていないし、いらなかった。

確かにそう思っていたのに、それなのに抱いてしまった気持ちはどうしようもない。



最中の彼の「好き」を信じられずにいるくせに。

どうしても彼への想いを消せない私を、誰か罰してくれたらいいのに。






< 22 / 62 >

この作品をシェア

pagetop