私だって泣きたいこともある
居合わせた学生たちは、遠巻きに見ているか
関わりあいたくないとばかりに足早に逃げていくかのどちらかで
誰もサチを助けようとはしない。


珠洲に目をつけられたら最後
下手に庇って、一緒に退学に追い詰められてもいいという勇気は、
誰にもないからだ。


私だってそう。

青扇学園生というステータスを失いたくはない…。



でも、今日は
私の虫の居所も悪かった。




―― 珠洲
 退屈しのぎのイジメとは いいご身分ね



沸々と湧きあがってきた怒りを抑えようともせず
私は、サチが手にするペンケースを取って

「…ララ」

瞳に涙を溜めて私を見上げるサチに、ニッコリと微笑みかけた。




振り返りざまに珠洲の前に立ち、

「これくらいで
 許してあげなさいよ」

ペンケースを差し出した。
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