王様とうさぎさん
次の日、莉王はいつも通りに出社し、昼まで忙しく過ごした。
くだらぬ夢も、倉庫の変な坊主のことも思い出す暇もなく。
お昼少し前、ようやく少し手の空いた潮が立ち上がり、大きく伸びをしながら、スチール棚の横に立った。
そこに貼ってある社食のメニュー表を見ているようだった。
「おっ。
いいじゃん、今日の日替わり。
莉王、食券まだあり?」
無駄な混雑を省くため、社食の値段は均一にしてあり、予め、人事部で食券の綴りを買うシステムになっていた。
「あるけど……。
今日はちょっと」
伝票を書く手を止めて言うと、
「えーっ。
なに? 予定あるの?」
と潮は訊いてくる。
うん、と言ったが、実はない。
単に、社食に行きたくないだけだ。
あの坊主が現れそうだったから。
「食券あるよ。
一枚あげる」
と莉王は引き出しに入れていた財布から、それを取り出した。