王様とうさぎさん

 

 忍の許を離れ、允の様子を見に行こうとした莉王を、由莉子が引き止める。

「莉王ちゃん」

「あの、お義母さん、すみませんでしたっ」
と頭を下げる。

 居間と縁側の間の和室。

 暗いその空間で、莉王は本当に申し訳なく思い、由莉子に土下座したい気持ちだった。

 こんなによくしてもらっているのにと。

「顔を上げて、莉王ちゃん。

 莉王ちゃんのせいじゃないんだから。

 でも、ちょっと優し過ぎるようね」

 そういうのは危険よ、と由莉子は言う。

 襖の向こうの忍を気遣い、声を落として言った。

「優し過ぎると、身動きできなくなるわよ。

 結婚前に及川さんが私を送ってってくれたって言ったじゃない。

 二人で暗い夜の林を歩いているとき、いつも自信満々なあの人の背中がなんだか丸まって見えてね。

 ちょっと可哀想になって、ぎゅーってしたいなあって思ったのよ」

 そんなことがあったのか。

 及川さんは、由莉子さんが、そんなことを思ってたなんて、知らないままなんだろうなあ、と思う。
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