王様とうさぎさん



 允はマンションに着くと、ベランダへ莉王を呼んだ。

「式を伸ばすのなら、急ぐこともなかったか」
と溜息をついて、赤い包みを出してくる。

「本当はお前に選んでもらおうと思ったんだが、時間がなかったから」

 厭なら、取り替えてもらっていいぞ、と言う。

「どうせ、サイズ直しに来るよう言われたし」

「あ、開けてもいいですか?」

 中からは、小さなピンクダイヤのついたティアラ型の指輪が出てきた。

「可愛い……。

 選んだの忍さんですか?」

「なんでだ」

「いや——」

 素敵だから、とか言ったら、殴られそうだな、と思う。

 プラチナのその指輪を眺めながら、訊いてみた。

「ところでこれ、なんでティアラなんですか?」

 允は止まったまま答えない。

 『王様』だからだろう。
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