王様とうさぎさん
 



 トレーを手に並んでいるとき、ふと気づいて、莉王は允に訊いてみた。

「そういえば、允さんって、社食で私を見て、霊感があるって気づいたんでしたよね?

 なんでわかったんですか?」

「それはだな……」

 食堂のおばちゃんに食券を出したりしながら、莉王は挨拶してくるおばちゃんたちに、いちいち挨拶を返していた。
 
トレーにおかずがすべて載って歩き出そうとしたとき、

「そこだっ」
と允が上から莉王の小さな頭をクレーンゲームのように鷲掴みにし、動きを止める。

 莉王の後ろに居た潮が、また、なにやってんだ、このカップルは、という目で見ていた。

 顔を固定された莉王の耳許で允が囁く。

「今、お前が挨拶したところに人は居ない」

「えっ」
と潮を振り向く。

 聞こえていたらしい潮は苦笑いして、

「ああ、あんた生きてないものに挨拶してたの。

 あんたのことだから、勢い余って、いつも、人の居ないとこまで挨拶しちゃってるのかと思ってたわ」
と言う。
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