王様とうさぎさん




「今日までお世話になりました」

 日曜、荷物をまとめ、部屋を掃除して、由莉子たちに挨拶をすると、由莉子は何故か涙ぐむ。

「なんだか私がお嫁に出す心境になってきたわ。

 今、莉王ちゃんのご両親もこんな気持ちなんでしょうね」

 いや、なんか、急な式で、てんてこまいしていて、淋しいとか思う暇ないみたいなんですけど。

 見れば、何故か及川まで、しんみりしている。

「よく頑張ったな、王様」

「あ、ありがとうございます?」

 毎日、美味しいもの食べて、お義母さんとお話しして、酒を呑みくらって楽しく過ごしてただけなんですけど。

 何故、こんなスポ根のノリに。

「さあ、今日は結婚式ね。

 終わったら、ゆっくり寝て、お肌を整えてね、明日の結婚式のためにっ」

 なんかややこしいな、と思いながらも、由莉子の気持ちはありがたく、

「はい。
 ありがとうございます」
と微笑んだ。

 最後にもう一度、ご先祖の間に挨拶に行く。

 朝、お世話になりました、とは伝えたのだが。

 もう一言、言うべきことがあったと気づいたからだ。
< 476 / 508 >

この作品をシェア

pagetop