王様とうさぎさん
「お前と結婚したやつは、絶対、幸せになる。

 高校のとき、よくお前がしょうもない話をしながら、土手を歩いてるのを見てた」

 そういえば、よくランニングしてくる真人とすれ違ってたな、と思い出す。

「お前のへらへらした顔を見て、平和そうだなーとか、悩みがなさそうだなー、と思ってた。

 きつい練習も勝ち負けも何もない世界でも満足して、ぬるいやつだなとか」

 おい。

「会社に入って気づいたよ。

 お前はどんな場所に居て、何をやってても、満足して幸せでいられる人間なんだって。

 それってぼんやりしてるように見えて凄いことだって、夢や目標がなくなって気づいたよ。

 俺はお前を尊敬する、莉王」

 どうした。

 打ち上げで、食い合わせでも悪かったのか、と思った。

「だから、卯崎とは付き合うな。

 あいつに、自分の周りにある幸せに気づかせてやることはない」

 お前と居たら、それまでなんとも思ってなかったささやかな幸せにさえ、気づいてしまうから。

 そう真人は言った。

 まだ手を握ったまま、真人は一度落とした視線を、莉王に合わせて言う。

「莉王。
 卯崎允は人殺しだ――」

 え。
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