王様とうさぎさん
 


「おはよう」

 目を覚ました莉王は、朝の光の中聞いた声に、反射的に、

「おはようございます」
と挨拶したあとで、誰? と思った。

「おはよう」
と真人が繰り返す。

 自分の部屋の白い壁の前に真人の顔がある。

 それを黙って見つめているうちに、夕べの記憶が一気に甦ってきた。

 莉王は叫んで立ち上がる。

「ケーキ食べてないよっ」

「は?」

「ケーキ食べてない、ケーキっ。

 あれ、賞味期限、本日限りじゃなかった?」

「……夜中に買ってきたんだから、まだ本日だろう」

 この状況で、第一声がそれか、と言われた。
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