キミがこの手を取ってくれるなら

起きてすぐにアラームの会話だなんて…

一晩中過ごした私達なのに、その会話はあまりにも普通だ。

まぁ、いきなり甘くなっても照れて困ってしまうんだけどね。こんな感じが、『幼なじみ』として長年過ごしてきて安心もできるところだから、まぁいいや、と思う。


「ってか、お前さぁ、普通過ぎないか?」

じゅんたもおんなじことを思っていたらしい。

「じゅんただって普通じゃない。『おはよう』とか、可愛らしく言って欲しかった?」


「いや。いきなり奈子が変わっても、困るよ。いつも通りでいいよ。…可愛いのは、ベッドの中だけでいいからな。」

そう言ってニヤリと笑った。
…やっぱり、ちょっとだけ私達の関係は甘くなったらしい。


「あ、名前」私は呟いた。

「何だよ?」

「昨日『奈緒子』ってはじめて呼んでくれたよね?」

「お前も、俺の名前『た』抜きで呼んだのはじめてだよな。」

「『純』って呼んであげようか?」

たぬき呼ばわりは、もう可哀想かな、と思ってそう聞いてみる。
じゅんたはちょっと考えこんでから言った。

「…奏と一緒の呼ばれ方は嫌だ。いいよ。『じゅんた』で。お前だけだろ、そう呼んでくれるの。」

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