キミがこの手を取ってくれるなら

1、大好きな幼なじみ


私の家の向かいには、王子様が住んでいる。
…いや、正確には住んで「いた」だけど。

私が3歳の時、両親が一軒家を購入することになり、この羽浦市に引っ越してきた。新興住宅地だったこの辺りには、私達一家のような若い夫婦に子供連れという家族が多かった。


両親の引っ越しの挨拶に付いていった私は、そこで運命の出会いをすることになる。


隣2軒に挨拶を済ませ、向かいの家に立った時、おかあさんが「つぎは、『こやま』さんね。」と表札を読めない私に教えてくれた。


出迎えてくれたこやまさんは、ふんわりとした笑顔がステキな優しそうなお母さんだった。

「なおこちゃんは何歳?3歳かぁー。うちの子は5歳だから、ちょっとおにいちゃんだね。仲良くしてね。」そう言うと、「奏ちゃん、ちょっと玄関までおいでー。」と家の奥に向かって声をかけた。


「はーい!」と元気よく出てきた男の子を見て、私の心臓はドキン!と大きく跳ねた。


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