キミがこの手を取ってくれるなら

「リセットしてくれたのかな?」私がそう言うと「そうかもな。」と言いながら、じゅんたは手を伸ばして私の髪に触れた。

「『プリンセス』にはなれなかったなー。」

私が髪を伸ばしはじめたのは、奏ちゃんの隣にいて恥ずかしくないお姫様のような女の子になりたかったからだ。昔、じゅんたにそう話したことがあった。私は奏ちゃんのお姫様にはなれなかったけど。

「言わないでよ…」と言うと涙がじわじわと浮かんできたけど、ぐっと堪えた。

「ごめんって。そんな顔すんなよな。」
唇を噛みしめ、ぐっと涙をこらえている私の顔を見ると、ばつの悪そうな顔をしていつものようによしよし、と頭を撫でてくれた。


そうしているうちに、偶然頭を撫でていた指先が首筋に触れた。
その冷たさに身体がびくっ、と震える。

「…んっ」

思わず声が出てしまった。

その瞬間、街灯の光だけで薄暗く見えているはずのじゅんたの顔がさっと赤くなったのがはっきりと分かった。

肩をそっと掴まれ、じっと見つめられる。

…視線が反らせない。
その目は熱に浮かされたように潤んでいた。


そのままじゅんたの顔が近づいてきて…
唇が触れる、と思った瞬間ふっと視線を逸らされた。

そのままポンポン、と私の肩を叩きながら「もう遅いから送ってく。自転車は置いて行けよ。」と車のほうへ向かってさっさと歩き出してしまった。
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