今、ここであなたに誓わせて

6才/19才



そんな周りの支えもあり、少しずつりんとの生活に慣れてやっと育児に余裕を持て始めた頃。
やっぱりいつまでも社長の家で預かっていてもらう訳にもいかず、りんの為にも同年代の子ども達の中で集団生活を学ばせてやるべきということでまた幼稚園へ通うようになった。しかし、俺は現場仕事で朝が早いがためりんの送迎は難しく、困っていたところまたおばさんがその役目を買って出てくれた。
本当におばさんを始め社長の家族には頭が上がらず、それは全部仕事でしか返せないと誰よりも必死に働いた。

そして、すくすくりんは育ち6才になった頃、俺は19才になった。俺は社長の勧めで職場に必要な資格の技能試験を受けようとしていた。比較的簡単なものということだったが、会社から高い試験料を払ってもらっている分必ず受からなくてはならないというプレッシャーがあった。そして家にはりんという厄介な小さな怪獣がいる、それに以前のように仕事に支障がないようそんなに睡眠時間を削ることもできない。そんな中で勉強する時間は限られていた。

そんな中、お前は地頭が良いからということで運転免許も平行して取っては、と社長から提案された。正直ここでは運転免許は必須であり、うちの職場で運転免許を持っていないのは俺位だ。だけど正直、技能試験の勉強だけでも手一杯なところ。さすがにそれは断ろうと思ったが、社長は俺がろくに家でできていないことを察していたようで、この機会にりんを預かると言ってくれたのだ。有り難い申し出に、何度も頭を下げながらりんを預けて家で勉強に専念できる時間を作れるようになった。

最初こそ、

「いやだ、おにいちゃんといっしょにかえるっ」

と泣きついてきて困らせたが、だんだん俺がいない生活に慣れるとぐずつくこともなくなった。りんと会うのは仕事終わりに一緒に社長宅で夕ご飯を食べさせてもらうという、わずかなものとなっていた。一緒に生活するようになってりんとこんなに離れたのは初めてだった。

そうして技能試験の勉強と平行して仕事終わりに教習所へ通うようになった。運転免許は一か月かけて取るようあらかじめプログラムされており、実技と座学で詰め詰めで夜遅くまで教習所にいるようになった。そうなると夜一緒にご飯を食べることもできなくなってしまった。体力仕事が終わった後の疲れで集中力が切れそうになる自分を奮い立たせ、早くりんを迎えに行ってやらないとという一心でなんとか全ての試験を一回で合格させた。

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