今、ここであなたに誓わせて

14才/27才


それから月日は流れ、中学校に上がって2年目に入ろうとした頃。私は14才、お兄ちゃんは27才になっていた。私は部活はテニス部へ入り、小百合は吹奏楽部、真也は野球部に入った。

なんとなく小学校の時から察していたのだが、この2人密かに両想いのようで。時々からかってせっついたりしているものの、なかなか進展しないのがつまらない。

小百合の真也に対する態度を見ると、これが恋というものかと勉強になった。まるで少女漫画の女の子のように、顔を赤くさせたりしどろもどろになったりするのだ。私も好きな人ができたらこうなるのだろうか、なんだか想像しにくい。

夕ごはんを食べ終えた後、いつものようにソファーに寝そべりながら少女漫画を読む。ふいに横で野球中継を見るお兄ちゃんに目線をずらした。そういえば、この人から浮いた話を聞いたことがない。

「お兄ちゃんって女の人と付き合ったことある?」
「失礼な奴だなお前、付き合ったこと位あるわ」

思いもよらぬ返答にびっくりして言葉が詰まった。だっていつデートをしていたのか、女の人と電話するところだって見たことがない。自分が意識してなかっただけかもしれないけれど、それだけ兄に女の気配は感じられなかった。

「う、うそだー」
「うそじゃないですー」
「じゃ、結婚とかも考えたことある?」
「それはないな、もう少しりんが大きくなってからじゃないと」
「いいよ別に私のことは気にしなくて。そんなこと気にしてたら結婚行き遅れるよ?」
「それならそれでいいよ、そこまで結婚願望ないし」
「何それ、寂しい人生」
「寂しくないわ。俺の人生はな、りんを無事大人まで育てられたらそれでいいの。それで良い人と結婚して幸せな家庭を作ってくれたら、もう何も思い残すことないわ」

唐突にこうやって爆弾をぶち込んでくるから私も返しに困る。なんだそれ、それで良いのか自分の人生。

「……重い」
「兄の愛情を重いとはなんだ、重いとは」
「お兄ちゃんもちゃんと自分の幸せ考えてよ。もし一生独身だったら、お兄ちゃんの老後の面倒誰が見るの?」
「それな」

と頭を抱える兄。もちろん、そんなことになれば私が面倒を見る。だけどこうでも言わないと、この人は私のことばっかりでちゃんと自分の幸せを考えてくれない。


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