今、ここであなたに誓わせて


そんなことを話した数日後、私の言う通り自分の幸せというものを考えたのか突然紹介したい人がいると言われた。家中を綺麗に掃除して、特別な日用の水色のワンピースを着て二人の登場を待った。なんせ兄から女の人を紹介されるなんて初めてのことで、どんな人を連れてくるのか気が気じゃなかった。

あの兄がどんな人がタイプなのかもよく分からないし。でももし怖い人だったらどうしよう、表面上はニコニコ笑っているのに見えない机の下で足をグリグリ踏みつけてくるような人だったら。お兄ちゃんは鈍いし馬鹿だし、そういう人にころっと騙されそうだ。

頭の中で色々想像しながら二人を今か今かと待った。

ガチャ、っとドアが開く音。ドキドキしながら玄関へ出迎えに走ると、そこにはよく見知った人が。

「なんだ、亜弓さんか」

って、ほっとしたのも束の間。
え?もしかして亜弓さんが彼女?

「も、もしかして、亜弓さんが紹介したい人?」
「あれ、気付いてると思ったんだけど」

と、言う兄。

「え?嘘でしょ?」

そう私が困惑していると、あの強気な亜弓さんがいつもより大人しくお兄ちゃんの影に縮こまってしまっていることに気付く。

「ち、違うのっ、亜弓さん。あのすごく亜弓さんで嬉しいしほっとしてるんだけど、本当今まで全然気が付かなくて、なんだかびっくりしちゃって」
「そうだよね、ごめんね。二人で相談して絶対にりんちゃんにはバレないようにしたかったから」
「そんな気使わず言ってくれたら良かったのに」

その後、一緒にお昼ご飯を作って一緒に食べながら二人の馴れ初めを聞いた。以前から亜弓ちゃんが好意を持っていて、自然な成り行きで付き合い始めたと。職場でも内緒で唯一おばさんだけが二人の仲を知っているらしい。なぜか緊張していたのか、自然に笑えず口角を上げるのに必死になっていた。

なんだろうこの複雑な気持ちは。お兄ちゃんが自分の幸せを考えて彼女を作って、嬉しいはずなのに。どこか寂しいというか。




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