今、ここであなたに誓わせて

学校の休み時間、早速友達の小百合に自分の素直な気持ちを打ち明けた。正直、もう色々考えすぎて授業どころじゃない。教室では話しづらい内容で、人気の少ない特別教室がある階の階段下で二人隣り合って座った。

「……私ね、この前お兄ちゃんに結婚してって自分で言ったのに、いざ女の人紹介されたらなんかすごく複雑な気持ちになっちゃって」
「やきもちみたいな?」
「多分。私この年になってもまだお兄ちゃんのこと独り占めしたいと思ってるのかもしれない。だとしたら最低だよね。もう私も子どもじゃないのに」
「そんなことないよ、そう思うのは普通のことだと思うよ?まだうちら中学生なんだもん」
「だけど私は早く大人になって自立しないとダメなんだよ。そして、お兄ちゃんの幸せを考えられる余裕が欲しい……」

小百合は私の話を聞きながら、そうやってひたすら慰めてくれた。

私から言い始めたことなのに、実際目の当たりにして、まさかこんな気持ちになるとは思ってもみなかった。これから家でお兄ちゃんとどう顔を合わせて良いか分からない。

この胸のモヤモヤをなんとか消し去りたくていつにも増して部活に力を入れてみたけどダメ。どうしても頭に浮かぶのは、あの二人。それなら、私も学校で好きな人を作ってみようか。小百合みたいに夢中になれる人ができたら、また違うのかもしれない。

だけど恋ってどうやってするんだろう。小百合はどうやって真也に恋をしたんだろう。そもそも好きって一体何なんだ。

家へ帰る足取りが重い。そんな最中、兄から護身用に持たされていた携帯にメールが入る。

『今日、夕ご飯作らなくていいよ。亜弓が作りに来るって』

という兄からのメッセージ。……亜弓がって、今まで私達の前では亜弓ちゃんて言ってたのに。そんな些細な変化でさえ胸が苦しくなる。

その日作ってくれたのはエビチリだった。それと、エビチリに合わせた中華スープと、海藻サラダ。私がエビが好きだからこのメニューにしてくれたのだろう。味はもちろん美味しかった。だけど胸がいっぱいだった私は食欲なんてなかった。でも、亜弓さんに余計な気を遣わせてはいけないと無理矢理それらを口の中へ放り込んでいった。

三人で食卓を囲み二人はビールをお酌し合いながら飲んでいた。他愛のない話をしながら食事を済ませると、最後に私と亜弓さんで食器を片付けた。今度エビチリの味付けの仕方とか、盛り付けの仕方とか教えて欲しいと言うと嬉しそうにしていた。



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