今、ここであなたに誓わせて


びっくりして職場ということも忘れ、説教モードに移行しそうになったところを柔らかい先輩の声が遮った。

「凜ちゃん、世の中危ない人もいるんだから。自分でおびき寄せてるようなものだよ。お兄ちゃんも口うるさく感じるかもしれないけど心配して注意してるんだから」
「はい」

さすがに先輩の言うことには素直に返事をする凜。しかし、すぐ近くで、うんうんと頷いて聞いていた後輩の渡辺へ思いがけない火の粉が飛ぶ。

「あれ?でも、渡辺さんは短い方が良いって言ってくれたよね?この間、可愛い可愛いって言ってくれたじゃん」

いきなり凜に肩を叩かれた渡辺はしどろもどろになって、口の前で一本指をたてた。

「しーっ」

思わず渡辺へ眉をひそめる。しかし、そこへ川崎が同意した。

「そりゃ可愛いよもうめちゃくちゃ可愛い、もう皆ね君をそれこそ娘同然として見守ってきたんだから」
「そうそう、だからこそ守りたい貞操観念」

調子の良い渡辺に先輩が軽蔑するような目を向けながら言った。

「可愛いって言っても渡辺みたいな不純な気持ちからとは別にね」
「不純って、女子高生嫌いな男いないでしょう」
「渡辺、今日から凜の半径3m以内入るな」
「え?遠っ」
「十分会話はできるだろ、あと不必要にじろじろ見るな」

過保護過ぎですよー、と後輩の嘆く声。そう言って、ねー、と凜と顔を合わせた。


思春期を終えて精神的にも肉体的にも少しずつ大人へ近づいている中、以前よりも格段に付き合いやすくなった。しかし、本当に変化の激しい今。この成長は果たして正しいものなのか、この成長を経てどんな大人へなるのか心配で気が気でならない。

何か間違いがあっては凜のその後の未来に大きな影となって落としかねない。将来を見据え、自分が何になろうかを見定める今が一番人生で大事な時期だと凜にかける言葉も年々厳しいものになっていた。

「りん、門限なんだが。今度から18時にしようと思う」
「は?何それ?部活やってた中学の頃よりも早くない?バイトもやってるし無理だよ」
「バイトはもう辞めさせてもらいなさい、そんなに夜遅く働く必要ない。その分のお小遣いだってちゃんとやるから」
「やだよ、来月からせっかく居酒屋のバイト受かったのに」
「居酒屋!?なんだそれ、聞いてないぞ」
「だって言ってないもーん」
「どこだその居酒屋!」
「言う訳ないじゃん、絶対来るでしょ?」

あの真面目を絵にかいたような体を動かすのが大好きな快活なりんちゃんが、いきなり高校に上がってどうしたの
か。一体どんな心境の変化があったというのか。
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