~SPの彼に守られて~
「ここは私が受けるので、貴方たちは避難して下さい」
「でも…」
「私のことはいいから、早く!!」

 白鳥さんがここから離れるように言うけれど、1人だと絶対に怪我を負ってしまうよ。

「こっちだ!」
「きゃっ、ちょっと、うわっ」

 鷹野さんは私の右手を掴むと普通乗用車の助手席のドアを開けて私を中に押し込み、鷹野さんは運転席に素早く乗り、そしてエンジンを掛けて普通乗用車が走り出した。

 もしかして白鳥さんを置き去りにする気?振り返って白鳥さんの方を見ると、徐々に白鳥さんの姿が小さくなっていく。

「鷹野さん、白鳥さんが危険です!戻りましょ?」
「俺たち2人で応戦してたら、誰がお前を護るんだ?相手がその隙を狙ってどんな手段でくるか分からねーし、お前の安全が第一だ」

 そりゃあ依頼主を護るのがSPの皆さんにとって大切なことだけど、危険な目に遭ってまで護って欲しくないよ。

「それでも私のせいで危険に遭うのは、絶対嫌です!」
「お前は自分が措かれてる危険さを分かってない!」
「っ!」

 鷹野さんが大声で怒鳴り、私は何も言い返せなくて静かに助手席に座る。

「アイツは…、レオはお前の想像を遥かに超える危険な男だ。助けに行って自滅したら、誰もお前を護れなくなる」
「そんなに危険な人なんですか?」
「ああ。それにお前が心配しなくても白鳥は強いから、あんな雑魚は白鳥1人で充分だ。シャーク、聞こえるか?」

 鷹野さんはマイクを使って鮫島さんと連絡を取り合ってるけど、本当に白鳥さん1人で大丈夫かなと心配な気持ちが消えなくて、どうか無事でいて欲しいと願うことしか出来ない自分にもどかしさを感じる。

「……分かった、着いたらまた連絡する。お前はシートベルトをつけて、目的地に着くまで気分を落ち着かせておけ」
「……はい」

 鷹野さんはマイクを置くと険しい表情をしながらハンドルを操作し、私は言われた通りにシートベルトを着け、深夜なのだろうか私たちを乗せた普通乗用車は渋滞に遇わずにどんどん進んでいく。

「……」
「……」

 何となく会話をするきっかけが見つからなくて、車の走行音だけしか耳に入らず、私はただじっと外の景色を眺めるのだった。
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