~SPの彼に守られて~
◆episode02
 あれから無線に白鳥さんのことが何も聞こえてこないけれど、本当に1人で大丈夫だったのかな?覆面マスクの男たちは体格ががっしりしていたし、怪我をしていなきゃいいけど……。

 そしてこの普通乗用車はどこに向かっているんだろう?私が住んでいたアパートから大分離れているし、鷹野さんはずっと険しい表情のまま運転しているから聞きづらいな。

 窓の外の景色を眺めていると、空はまだ暗いけど道路には新聞配達の自転車を漕いでる人、私たちが乗る普通乗用車以外の車はタクシーが2台走っていて、やがてシャッターが降りている商店街を通りすぎると、普通乗用車は居酒屋風のお店の前に停車して、鷹野さんは私の方に顔を向けた。

「俺は車を車庫に入れてくるから、お前は先に店の中に入ってくれ」
「……分かりました」

 私はシートベルトを外して普通乗用車から降りてドアを閉めると、鷹野さんが乗る普通乗用車は発進してお店の裏側に回っていった。

 お店の暖簾を見ると『お食事処たかの』とあって、鷹野さんは先に入れって言っていたし、ドアを横にスライドして中に入ると、カウンターの中に白髪交じりの角刈りの男性が1人だけで、他にお客さんらしき人は一人もいない。

「おや?お嬢ちゃん、一人かい?」
「えっと、鷹野さんに先にお店に入って欲しいと言われて…」

 私が男性の問いに答えたら、お店のドアが開いて鷹野さんが入ってきた。

「親父、ご飯の用意を頼む。こいつの分も」
「久しぶりに帰ってきたと思ったら、その口のききかたは何だ!」

 この男性、鷹野さんと顔は似ていなくても、口調は鷹野さんとそっくりだし、親子だと納得する。

「ここは鷹野さんの実家なんですか?」
「ああ。一階が居酒屋で、二階が生活スペースだ。親父、事情があってコイツを俺の部屋に暫く泊まらせるから」
「はいぃ?!」

 暫く泊まらせるからって、何で?どうして?鷹野さんの部屋に泊まるってことは、今日は自分の部屋には戻れないってこと?!
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