~SPの彼に守られて~
 これからの移動は車なんだ…、言葉の表現が適切じゃないけど、車での送迎って社長や役員などのお偉いさんが高級車に乗って出社するイメージをもっているし、一般人の私が車での送迎だなんて大袈裟なような気がするんだけどな。

 でも昨日、鷹野さんは私に「危険さを分かってない」って忠告していたし、追いかけてきた男たちから護ってもらうという契約なので、あれこれ考えずに素直に乗ろう。

「分かりました、ありがとうございます」

 私は助手席に座ると、鷹野さんは助手席のドアを閉めて運転席に回ってドアを開けて乗り込んだ。

 鷹野さんがエンジンをかけると、液晶画面には私の住むアパートから勤務先である角井百貨店までの地図が表示され、鷹野さんはマイクを持つ。

「鷲宮さん、今からマルタイを勤務先まで送ります」
『了解した。ホークス、頼んだぞ』
「任して下さい」

 鷲宮さんの声がスピーカーから聞こえ、鷹野さんはマイクを置くと、ハンドルを握ってアクセルを踏み、普通乗用車は勤務先の角井百貨店へ向け走りだした。

 基本的にアパートから勤務先までの往復を繰り返す生活で、朝はバタバタしているし、寝坊した時には駅までダッシュしているし、電車から見える風景とは違って、車で走るとこんな所にカフェや個人経営のお店が沢山あるんだなって初めて気づいた。

 信号が赤になり、普通乗用車が停止すると、鷹野さんは顔を私に向ける。

「昨日鷲宮さんから警護の内容を説明したが、確認のためにもう一度言う。勤務先に着いたら、俺は社員通用口まで同行警護をする。帰りも社員通用口で待つが、帰りが遅くなりそうな場合は分かった時点で知らせろ。俺と白鳥はそれに合わせて警護の時間を調整する。お互いの連絡先は、勤務先に到着した時に交換だ」
「分かりました」

 信号が青に変わると鷹野さんは顔を正面に向きなおして、普通乗用車が走りだす。
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