~SPの彼に守られて~
 経理課に入って、いつものように自分に任された仕事を始めた。

 桁数の打ち間違いに気をつけながら数字キーを押して画面をじぃっと眺めると、一瞬思考が止まりかけて、危ない危ない。

 マッサージに行って疲れをとりたいけれど、そんなことは今の状況じゃ言えないし、今日は帰ったらすぐ寝ちゃった方がいいなぁ。

 昼休みのチャイムが鳴り、財布とスマホを持って地下にある社員食堂に向かうと、大勢の人たちがトレイを持って並んでいた。

 今日はどのメニューにしようかな?値段は安いけれどボリュームたっぷりの和定食か、値段はちょっと高めだけれどデザートが付いている洋食セットにするか…、最近は追いかけられた疲れが残っているし、デザートで糖分接種しちゃおうっと。

 トレーを手にして洋食を提供する列に並んで、人の流れに沿いながらサラダとメインのパスタとデザートをトレイに乗せて、空いている席に座った。

「いただきます」

 フォークでサラダを口に運び、一口一口のスピードがのろくて、パスタもデザートも食べても美味しく感じなくて、余程疲れが溜まっているんだなぁ。

「ごちそうさまでした」

 勿体無いけれど、洋食を残しちゃった。

「全然食べていないけれど、大丈夫?」
「龍崎さん…」

 向かいの席に龍崎さんが座って、トレイに残っている洋食を見て心配そうに尋ねてきた。

「ちょっとだけ疲れがありますが、大丈夫です。残業にならないように気をつけます」
「それならいいんだけど、あまり無理は駄目だよ?辛かったら遠慮なく言ってね」
「ありがとうございます」

 さっき警護をしてもらった鷹野さんも体調のことを聞かれたけれど、せめて仕事はちゃんとしたいから、あまり甘えたことはしないようにしたいな。
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