~SPの彼に守られて~
 翌朝、目が覚めるとベットから降りて、ルームウェアから通勤服に着替え、メイク道具を手にしてファンデをおでこから塗っていると、昨日キスをされたシーンを思い出しそうになる。

 普通ならという言葉は適切じゃないけれど、普通想いを寄せる人からのキスは嬉しいと思うけれど、昨日は切なさと胸の痛みが残るキスだった。

 あー、もー、変に意識しちゃうと鷹野さんだって警護をしづらいだろうし、うん、私と鷹野さんは依頼主とSPの関係だから、それを忘れちゃいけないよね。

 手鏡で顔を写してみると目の下に薄くクマがあって、こんなだとまた鷹野さんに不細工だのなんだの言われそうだから、クマをカバーするクリームを塗り、そしてリップを塗って、これなら少しは不細工を返上できるかな?

「千明、準備は出来たか?遅れないように行くぞ」
「今、行きます」

 ドア越しに鷹野さんの声がしたのでメイク道具をポーチにしまいながら返事をし、手櫛で前髪を整え、バックを手にしてから部屋を出ると、いつものように鷹野さんのお父さんが作る美味しい朝食を食べた。

「鷲宮さん、今から出発します。スワン、"先着"を頼んだぞ」

 鷹野さんと一緒に普通乗用車に乗るとマイクで鷲宮さんたちに連絡を入れ、普通乗用車は角井百貨店に向けて走り出す。

 今日は会議があるから出勤したらすぐに必要な資料の印刷をして、出席する人の人数分の飲み物を用意して、会議が終わったら伝票のまとめをしたり…、今日も定時までやることが沢山だなぁ。
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